平成27年4月29日

陶芸家イスカンダル・ジャリル氏に対する叙勲について
 
 
  1. 4月29日、平成27年春の外国人叙勲において、日本政府は、陶芸家イスカンダル・ジャリル氏が旭日小綬章を授与することを発表しました。同氏への叙勲は、同氏が日・シンガポール間の陶芸を通じた交流及び相互理解の促進に大きく寄与した功績によるものです。

  2. 1972年にコロンボプランの奨学金にて日本(岐阜県多治見市の陶磁器意匠研究所)へ留学した同氏は、青を基調にした独自のスタイルでシンガポールの陶芸界をリードする作品を次々と生みだしてきました。1988年にはシンガポールの文化勲章を受章するなど多数の輝かしい功績のある同氏は、シンガポールを代表する芸術家の一人として尊敬を集めています。また地下鉄タンジョン・パガー駅、チャンギ空港第2ターミナル等をはじめとする同国を象徴する場所や建物での壁画作成に携わり、その作風に日本文化の基礎があることが広く知られています。また大統領官邸(イスタナ)では同氏単独の作品展示の棚が設置されるなど、同国首相を始め指導者の多くが敬愛する同氏の作品は、国内外の賓客によって愛でられる機会が多いものとなっています。

  3. 次世代の陶芸家の育成にも尽力している同氏は、日本の陶芸技術だけでなく、その背景にある日本のものづくり精神を高く評価しており、そうした技術や精神を伝えるため、過去20年以上にわたりのべ約200名の弟子・生徒を日本へ引率し、陶芸を始めとする日本文化に触れさせる活動を行なっています。このように同氏は、陶芸におけるネットワークを活かし、日・シンガポール間の陶芸を通じた交流及び相互理解を促進する上で大きな功績を果たしてきました。

  4. 外国人叙勲は、長年に亘って対日関係に功績のある個人に対して行われるものです。最近のシンガポール人への叙勲の例としては、平成24年(2012年)春にシャンムガム・ジャヤクマール元副首相に旭日大綬章が授与されています。シンガポールにおいて芸術家に対する叙勲は初めてとなります。

  5. 後日同氏に対する勲章授与式を行う予定です。
<参考>
平成27年春の外国人叙勲受章者一覧
陶芸家イスカンダル・ジャリル(Iskandar Jalil)氏について
1940年1月15日生まれ。現在75歳。

1962年に教員養成学校を卒業し、シンガポールの小学校及び中学校にて理科や数学、職業訓練学校にて芸術の教師を務める。1972年にコロンボプランの奨学金にて日本へ留学し(岐阜県多治見市の陶磁器意匠研究所にて)、陶芸を学んだ以降は、職業訓練学校やタマセック・ポリテクニックにて教鞭を執りつつ、陶芸家として活躍。

1977年にシンガポール国ナショナルデーアート展特別賞を受賞するともに、1988年にシンガポールの文化勲章にあたるCultural Medallion Awardを受賞。1999年には、マレー芸術協会よりシンガポールアーチスト協会(APAD)賞を受賞するとともに、2002年にシンガポール・プレス・ホールディング社マレー語ブリタ・ハリアン紙より「2002年最も活躍したマレー人」賞を受賞。2012年にはナショナルデー賞(パブリック・サービス・スター)を受賞。2014年に日・シンガポール間の交流促進並びに当地における日本の認知度向上に対する貢献を踏まえ、外務大臣表彰を受賞し、今日に至る。

また、1993年〜1997年までシンガポール国立大学アートセンターのフェローを務めるとともに、1992年4月から2006年3月まで国立芸術協議会のアドバイザーを務める。

なお、在シンガポール日本大使館の文化施設であるジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)において、2013年1月19日〜2月8日にシンガポールにおける日・アセアン友好協力40周年記念キックオフイベントとして、同氏及び弟子の陶芸展(Iskandar Jalil〜A lifelong passion for his craft and his teaching)を開催。また2015年3月18日〜4月4日に同氏及び弟子の合同陶芸展(Balance in Imperfection)を開催。本年8月末から9月上旬に同氏の個展をJCCで開催予定。