「東京大学総長賞授賞式でのスピーチ」  
掲載:2011年11月

皆さん、こんにちは。法学部三年生のクー・カーチャイと申します。


総長賞を受賞されたことは身に余る光栄です。まず、この場を借りて、私を推薦して下さった山下法学部長と、法学部留学生担当の高野さんと飯塚さんにお礼を申し上げたいと存じます。どうもありがとうございます。


本来であれば、私のやってきたボランティア活動について発表する予定でしたが、被災地で活動をご一緒させてくださったボランティアの方々も今日いらっしゃいます。私よりも遥かにボランティア活動に尽力してきた方々の前で、自分のことについてお話をするのは恐縮です。そこで、今日は敢えて震災以来、勉強となったことについてお話をさせて頂きたいと存じますが、その前に少しだけ、シンガポールで開催した、募金と啓蒙を趣旨としたチャリティー・イベントを紹介させて頂きます。


3月15日から、4月2日までのイベントの流れをスライドに纏めてみましたので、 説明はしないように致します。どうぞご覧になってください。

日付 出来事
3月15日 メールでイベント企画発足・実行委員会組成の呼びかけ
3月16日 日本から帰国
3月17日 第一回実行委員会ミーティング
3月18日 ファ・チョン高校、学校のコンサート・ホール使用を許可
バンド募集開始
3月21日 震災時福島県いわき市にいたシンガポール人と面会、 イベントでの現状報告と感想発表を決定
3月23日 バンドオーディション完了、出演バンドの確認
3月24日 シンガポールの経済開発庁、スポンサーに決定
チラシ作成完了、インターネットで本格PR活動開始
3月25日 在シンガポール日本国大使館と連絡
イベントへの招待+義援金の大使館への寄付を希望
3月26日 ファ・チョン高校の後輩たち、イベントの案内係に
3月27日 プレス・リリース発表
3月29日 パンフレット、絵葉書など最終確認、印刷へ
4月1日 実行委員会最終ミーティング
4月2日 フル・リハーサル(昼)
イベント開催(夜)
4月3日 イベントの新聞報道
4月4日 帰国(学部開講)
4月5日 在日シンガポール留学生協会会長ン・インジャンさん、実行委員会を代表して鈴木大使と面会
日本国大使館にS$20,150(約133万円)を寄付



イベントについては、一つだけ言わせて頂きたいことがあります。それは、実行委員会全員の努力なくして、イベントの成功はあり得なかった、とのことです。そして母校であるシンガポールのフア・チョン学校の先生の方々や、今日お越し下さったシンガポールの日本国大使館の日下さんなど、沢山な方々が応援して下さったことを心から感謝しております。


これは委員会の集合写真ですが、そのうちの5人が今日来場しています。今日来てくださった友達もいれば、すでにシンガポールで働いている友達もいます。18日間のとても貴重で意味のある時間を皆と一緒に経験できたことを、一生の光栄だと思っております。










これからは自分のボランティア活動を扨置き、残りの時間で感想を申し上げます。



(釜石市のお弁当屋/撮影者:クー・カーチャイ、7/3に撮影)



今回受賞されることを、勿論、光栄だと存じますけれども、不安、そしてちょっとした遺憾も感じます。私は自分のやるべきことをやっただけです。それが総長賞に繋がったことについては多少不安です。そして、沢山の方々が犠牲となってしまった東日本大震災があって、その後、はじめて自分の生き方を考え直したことをとても遺憾だと思っております。


そこで、今をいきている私たちは、正に問題解決の難しさの必然性を忘れかけていると存じます。現在では、インターネットの普及でチェンジが起こしやすくなってきたと言われていますが、それは繋げることだけが簡単になりましたので、背後にある、根本的な問題は変わりません。ウェブサイトのリンクをクリックしまくることによって、世界の問題はすべて解決されることはまずありません。重要なのは実際の行動であり、現実に基づいた関心でもあります。


(釜石市沿岸の全壊地域/撮影者:クー・カーチャイ、7/3撮影)



そして、残念ながらも、この「実際の行動」というは簡単ではありません。私は前からずっと、色んな方々から「ボランティアをやっていることに感動しました」と言われてきましたが、ズバリ申し上げますと、人を感動させるのは実に簡単です。それに対して、人を行動させるのは難しいです。「実際の行動」には持久力・集中力・思考力が必要ですが、一瞬の感動だと、それらは必要ではありません。


だが、現代社会はいま、我々に要求しているのは、単なる感動ですか、それとも行動ですか。


(大槌市の河川敷のゴミ/撮影者:ライ・インロン、10/9撮影)


この質問に対して、我々が出すその答えが、この国の将来を決めるのではないかと存じます。


いろいろ大変偉そうなお言葉まで申し上げてしまいましたが、最後に二つ、申し上げたいことがあります。まず、今日来て下さった東北で一緒にボランティアをさせて頂いた皆様に一言を申し上げたいと存じます。他人の為に何かをやるということの難しさ、逆にその重要性も教えて下さって、本当に感謝致します。次回お会いする場所は河川敷か、全壊地域か、それとも仮設住宅か、色々分かりませんが、また東北でお会いできることを心から願っております。


(おらほの復興市(石巻市)でのグループ写真/撮影者:ライ・インロン、10/16撮影)



そして終わりに、私はいつも「ボランティアの心には国籍がない」という考え方を申し上げてきましたが、留学生として一言だけ言わせて頂きます。私は今まで四年間近く日本におりましたが、日本人の方々から数えきれないほど恩恵を頂いております。そして震災の半年前に一人旅で東北に行ったこともありましたが、私には東北の良い思い出しかありません。







東北の早急な復興を祈っております。 そして、復興の道はまだ長いと言わざるを得ませんけれども、東北には復興の日は絶対やってくると信じております。だが、「祈り」や「信じること」だけでは、復興には繋がりません。


なので、総長賞を一つの「責任」、一つの出発点として受け止めて、これからもボランティアという形で頑張っていきたいと存じます。


どうぞよろしくお願い致します。


ご清聴どうもありがとうございました。