シンガポール国立大学の学生と過ごした日々 - 国際交流基金 JENESYS若手日本語教師派遣プログラム

 
掲載:2009年5月



「無理」「書けない」「間に合わない」そう叫びながら徹夜で教案作りに追われた前期。 教室に行くのが楽しくなった後期。


まともに教案すら書けなかった私が授業を楽しめるまでに成長をすることができたのは、指導してくださった先生方、そして何より学生のおかげです。


予習、復習、宿題をして授業に臨む彼らに対して少しでも質が高く充実した授業を提供するため授業準備には時間をかけました。その結果が日本語教授の技術を伸ばすことへつながり、特に後期は自身の技術的成長を実体験しながら授業をすることができ、気持ちに余裕が生まれ授業を楽しめました。


また、学生が常に私に対して協力的で優しく、いつも笑顔を向け一生懸命に応えてくれました。例えば、活動のデモンストレーションに失敗しても、理解している学生がすかさず理解していない学生にフォローをしてくれました。経験豊かな先生方のように日本語を教授するということに関しては完璧ではなかったけれど、学生とは誠実に向き合ってきました。誠実に向き合うことで私という人間を通し日本という国を今まで以上に好きになるキッカケとなっていたら・・・彼らにとっても私と過ごした時間が無駄ではなかったかなと思います。

そして、彼らと過ごす中で自分が忘れていたことを思い出させてもくれました。彼らは、学ぶ事、人や物事に対する受け入れや吸収力が「素直」で「柔軟」だったと思います。私は、社会に出てから少し物事や人を受け入れることに対し「素直さ」や「柔軟さ」を忘れ自分の視野を狭めていたように思います。



ここでの経験を通して、教師には「技術」「知識」そして「人間性」が重要だということがわかりました。これから私は、「技術」「知識」を豊かにするため勉強に励みながら、様々な人に出会い、経験し、否定する人間ではなく受け入れられる人間でいられるように「人間性」を磨き豊かにしていきたいと思います。また、ここでの経験を日本とシンガポール社会への貢献に役立てたいと思います。


これからここで学生と共に過ごすことはできないけれど、「先生!!昨日は寝ました!今日は、とても、とっても元気です!!」と勢いよくドアを開けて教室に入ってくる学生、いつも皆より早く来て私と話してくれる学生、授業最終日に手紙をくれた学生・・・一人、一人が私の心に深く残っています。みんな、ありがとう!!


そして、シンガポール国立大学への赴任にあたり、ご尽力いただいた全ての方へ貴重な経験をさせていただいたことに感謝いたします。