「日本語を学習して」
(ンさんの卒業生総代スピーチ)
 
掲載:2009年5月


ご来賓の皆様、会場の皆様、こんにちは。


私は日本語を学んできた六年間の間、なぜ日本語を第三言語として選んだかをよく聞かれました。そこで、本当の理由をつくづく考えてみましたが、「ドイツ語やフランス語にはあまり興味がないかな」くらいの答えしか出せませんでした。日本語を選んだ本当の理由は今でもはっきり言えません。日本語を学び始める前は、日本と日本文化についての知識は極めて乏しかったです。日本料理はすしと刺身しか知らなくて、ドラえもんというアニメはシンガポールで製作されたと思っていたほどでした。その頃日本語にそんなになじみのなかった私が、今日本語にこんなに興味がわいてきたのは、不思議なものです。


思い返してみると、語学センターでの授業をつまらないと思ったことは一度もないと言い切れます。ストレスだらけの学校生活の中で、週二回語学センターに通うのが唯一の楽しみだと何度も感じたことがあります。私のクラスメートは次々とやめていきましたが、私は授業をサボるようなことは頭をよぎったことさえありませんでした。日本語を勉強すればするほど、ひらがなの美しさに魅了されるようになりました。また、漢字にしろ文法にしろ、日本語と中国語との類似点と相違点に常に興味を掻き立てられてきました。こうして日本語のおもしろい特徴を見出すにつれて、日本語がますます好きになってきました。一日中ずっと日本語を勉強しても飽きが来ない時もあれば、家の中を歩き回りながらにっこりして日本語で独り言をつぶやく時もありました。そして新しい語彙もあまり苦労せずに覚えられて、文法も難しすぎると文句を言わずにひたすら身につけていきました。私はよく日本語の成績をうらやましがられましたが、そんな時、「たぶん僕は前世で日本の侍だったかな」などと冗談めかして言いました。


語学センターのおかげで、おもしろい授業を受けただけではなくて、いろいろな交流プログラムにも参加しました。これらの活動を通して、日本人の友達を作ったり日本文化に対する理解を深めたりできるようになりました。高校一年生の時、やっと日本へ行く機会に恵まれました。日本政府のJENESYSプログラムで早稲田大学に招待されたのです。日本の大学生活を味わい、日本の美しさやユニークな生活を身をもって体験させていただきました。とりわけ、古色蒼然としたお寺やとても礼儀正しく接してくれた店員さん達の笑顔が印象に残っています。その時、私はあまりに興奮して、真夜中になっても少しも疲れを感じませんでした。初めて仲のいい友達たちと日本に行けて一生忘れられない思い出になりました。次に日本へ行くのはたぶん留学のためでしょう。日本の大学の文学部に入ろうと思います。私の選んだ進路がほとんどの友達とかなり違っていることは承知しています。でも自分の情熱に従えば、たとえこの先どんな障害が待ち受けていても、きっと後悔はないでしょう。


日本語が好きになったのは先生方のおかげでもあります。この場をお借りしてこの六年間にわたって教えてくださった先生方にお礼を申し上げたいと思います。横井先生、浅井先生、武藤先生、ルイ先生、遠藤先生、どうもありがとうございました。日本語の文法から試験対策に至るまで先生方からたくさんのことを学びました。特に、遠藤先生には、二年間にわたっておもしろい授業とコースワークやスピーチに関するご指導をいただきまして本当にありがとうございました。それから、日本語に限らず、ほかの科目でもベストを尽くすように激励してくれた両親にも感謝したいです。


最後に語学センターで勉強している後輩達の皆さんに言いたいことがあります。「好きこそ物の上手なれ」ということわざがありますが、この場合、「好き」というのは単なるポップカルチャーなどに対する興味だけではなくて、その言語に対する情熱です。つまり、言語の美しさに喜びを見出す積極性を持つことが大切なのです。皆さんはこの積極性を持っているからこそ今ここにいるのでしょう。これからも、日本語に対する熱意を持ち続けてください。


ご清聴どうもありがとうございました。