2011年日本語スピーチコンテスト優勝者による静岡県ホームステイ体験記  
Elly Chia




どうしたら日本人とシンガポール人がお互いに協力しあって楽しい職場をつくっていけるのだろう。日系企業に勤務してきた私の経験から、いくつかそのポイントを多くの日本人に聞いてほしいと思い、「日本語スピーチコンテスト2011」にアラフォーの「高齢」で初出場しました。そして、思わぬ結果が出ました。日本大使杯を受賞。静岡県でのホームステイ体験プログラムを頂いたのです。


増井さんの家でのホームステイ
正直、社会人のホームステイということで、初めは不安だらけでしたが、静岡市の増井さん御一家が本当に親切に受け入れてくれました。お母さんの由美子さんは、自宅の一角に駄菓子屋ひろば『地球のこえ』を設けていて、近所の子供たちに遊び場を提供していました。「もっと外国人と交流したい、『地球のこえ』の子供たちにもっと外国のことを知ってもらいたい。」そんな思いで私のような外国人に家をオープンしたそうです。


増井さん御一家とは実の家族のように、楽しい時間を一緒に過ごしました。駄菓子屋ひろばに来た子供たちと遊んだり、スーパーへ買い物に行ったり、近所の忘年会に参加したり、お子さんのバスケットボールの試合の応援もしました。また、日本平からの富士山の眺めや、大井川鉄道SL乗車なども体験しました。


由美子さんとのおしゃべりは一番の楽しみでした。2人とも十代の子供が3人いて、義父母と共に暮らしています。毎日、深夜まで共通の話題が尽きませんでした。日本人女性の課題とシンガポール人女性の課題は案外似たようなことなのだと思いました。由美子さんは子供や義父母の世話、家事や庭の手入れまで自分でしているので、我が家では、住込みの外国人メイドさんに家事や子供や年老いた義母の世話を「アウトソーシング」していると言うと、想像がつかないようでした。でも、「今度、住込みのメイドさんを1ヶ月でいいから体験してみたいなぁ」と、ユーモア一杯に語っていました。


増井さんご一家と生活して日本の一般的家族の日常生活の課題についてわかったことは、日本についての新しい発見でした。


静岡ならではの食べ物
これまでも日本には何度か行き、シンガポールでも日本食を楽しむことがあったのですが、今回は静岡県ならではの食べ物を毎日のように楽しみました。駿河湾特産品の桜えびのかきあげやせんべい。四百年以上前からある伝統的な食べ物とろろ汁は、まるで納豆のようでした。黒はんぺん入りの静岡おでん。断食後の修行僧の食事にちなんで作られた、ワサビそば。それから静岡名物の安部川もちなど、大発見!今も静岡の味を思い出しただけで幸せな気持ちになります。


歴史に触れる体験
旧東海道の歴史話を聞きながら、丸子・宇津ノ谷を一日かけてまわったことは一番面白かったことです。途中で、三百年以上も歴史があるお茶農家を訪れました。旧式のコタツ、風呂、かまどが昔のまま使われていることは、実に面白いと思いました。


また、別の日には十数名の記者団に囲まれ、緊張しながら静岡県の川勝平太知事を表敬訪問しました。がたがた震える声で知事にどんな話しをしたか、すっかり忘れてしまいましたが、心を込めて静岡県について説明をしてくださった知事の姿はとても印象的でした。


さらに、三菱電機(株)静岡製作所を見学したときは、所内にシンガポールの国旗が掲げられ、正面玄関の電子看板に私たちを歓迎するメッセージが表示されていました。そればかりか、所長は忙しい中で挨拶に出てきてくれました。外交官でも関係者でもない私たちに、丁寧に対応してくれたことに、とても感動しました。


心豊かな静岡の人たち
静岡県は「ふじのくに」と呼ばれています。富士山は美しい女性のようにおしゃれが上手です。朝はゴージャスメイク、昼間はナチュラルメイク、夕方はギラギラメイク。雨が降りそうな時には、傘雲をさしかけてバッチリメイクをキープ。時には睡眠美容で御殿場の近くまで行っても会えない。富士山がどうしてそんなにも日本人の心を捉えるのか、自分の目で毎日眺めているうちに分かった気がします。


資源の豊かさに恵まれている静岡県の人々は、心も豊かだと感じました。私たちはどこへ行っても熱く歓迎されて、「スピーチコンテスト、優勝おめでとう!」の声をかけてもらいました。まるで、静岡県の全県民380万人が私たちの優勝を喜んでくれたような歓迎ぶりでした。


今回、日本語スピーチコンテストに優勝したことをきっかけに、静岡県の人々との「絆」を結ぶことができました。この「絆」を一生大切にしたいと思います。これからもシンガポール人、日本人を含む多くの人々に静岡県の話をしたいと思います。


主催者をはじめ、静岡県の皆さま、また、多くのスポンサー、団体や個人の皆さまに、心から感謝いたします。すてきな思い出を一生忘れません!